僕のいる病院は一般病院だ。大学病院などとは違い、普通の病気の人が多い。
言い方は悪いが、大学病院や市中病院でも規模の大きい有名な病院は、患者さんを選ぶ。その程度の病気では、とか、治療の施しようがないので、とか、色々な理由があるだろう。
うちのような一般病院では、患者さんを選ぶなどということは(普通は)ない。だから、入院している人たちは、難病から単なる老衰まで色々いる。
最近気になるのが、「お看取り」と呼ばれる患者さんたちだ。老衰が激しく、病気そのものがなかなか治らず、しかも家族が積極的な治療を望まない場合には、うちの病院では「お看取り」と呼ばれている。
老衰が激しい人はたいていの場合、嚥下ができなくなってものが食べられなくなっている。
単に食べられないだけなら、中心静脈栄養や胃瘻を作るなどして、からだの中に栄養をいれるコトは可能だ。しかし、「お看取り」となった人たちは、このような積極的な治療行為は行わない。
つまり、簡単に言えば、病棟の中で点滴一本ぶら下がってるだけの、物が食べられない人たちは多くは「お看取り」なのである。死ぬのを待たれているのと同じだ。
色々な事情があるのだろうが、大した栄養にもならない点滴をいれているだけで病院に寝ているだけだったら、自宅で点滴もナシに寝転がっていたほうがいいのではないかと思ってしまう。
病院にいたって自宅にいたって、栄養失調で弱っていくのは同じだ。病院にいればオムツの交換とかやってもらえるというメリットはあるが。
「お看取り」の人たちはほとんどが重度の認知症か意識がないのだが、中には、意識のはっきりしている人もいる。中には、この人お看取りでいいの?と思うような人もいる。
回診するときには「お看取り」の人にも同様に声をかける。
「どっか具合悪いところないですか?」
そりゃあ全部が具合悪いだろう。
終末期の医療というのは最近盛んに議論されているが、そのほとんどが末期癌患者のサポートだ。単なる老衰の人のコトはほとんど議論されていない。
癌だったら、痛みがソートーひどいので痛み止めに麻薬を使うことが多い。そういう場合は入院してないと終末期医療はムリだろう。
けど、老衰ではそれほどの痛みが出てるとも思えず、本人にとっては特に入院しているメリットはない。
病院行って、無意味な点滴が一本だけぶら下がっている寝たきりの人がいたら、恐らくそれは「お看取り」のひとだろう。
応援よろしくお願いします→
医学 ブログランキングへ [1回]
PR