どのツラ下げて

水曜日外来は、以前と比べてホントに存在価値を感じなくなってきている。今日も僕が入るオペはなさそうだから、最初からゆったりと時間を過ごす気分になる。

だが、先日に続いてまたまた新患が多い。病院にとって新患が多いことは喜ばしいことなんだが、診察する方にとっては１から全て話を聞かねばならないのは当然だが、その人のもともとの状態、たとえば飲んでいる薬だの最近の血液データだの、手術歴だの、そういうのを考えなきゃならないから神経を使う。

以前は良くいわれたこと（僕も研修医の時はそう思っていた）だが、整形外科医はナニも考えずに痛み止めと湿布だけ出していて、内科からすればいい迷惑だという。もちろんそんなこと言われないように神経を使うのだが、そうするとソートーな時間がかかる。

そういう医療的なことで時間がかかるのはしょうがないが、コメディカルの気の効かなさでもそうだ。延々と2時間ぐらい待たせてしまった新患、といっても他科から受診指示されたそうだが、話を聞いてみるとホクロを取って欲しいと。まぁ僕はやろうと思えばやれるが、皮膚科から整形でホクロを取ってもらえと言われたらしい。



まぁどう見てもホクロだから、とても整形に依頼されるようなものではない。よくよく患者の話を聞いてみると、皮膚科のドクターがなにか手紙を書いていたから、その内容がカルテにあるんじゃないか？と。どう見ても無い。

だが、この病院は紙カルテだ。科ごとにバラバラになっていて、他の科のカルテはすぐには見れない。念のため「形成外科」のカルテを調べてもらうと、なんと皮膚科からの依頼票が入っていたと。

患者が整形外科と形成外科の区別がつかないのは日常茶飯事だ。だが、総合受付でナニも考えずに整形外科に行かせて、整形の受付でも患者の受診内容一つ確認もしていない。患者は2時間も待つは、僕は話を聞いてからいろいろ手配するはで20分ぐらいロスする。

バカげていることこの上ない。


近所の整形外科から紹介された患者。施設に入っていて発達障害で自身はコミュニケーションが取れないのだが、いつの日からか指が曲がったまま伸びなくなっているとのこと。家族に聞いても2－3週間前に気付いたらしいがはっきりはわからない。拘縮はしていないからそれほど大昔のものでは無いだろうが。

レントゲンを撮ってみても骨折は無い。指はPIP関節（第2関節）で曲がっていて、自分では伸ばせないようだ。他動的には伸ばせる。恐らく伸筋腱断裂だろう。手術目的との紹介状だったが、あいにくここの病院には手を専門にしている人はいない。

さらに、手の外科というのは手間はかかってリハビリもしっかりやらないとロクな経過にならない。オペ点数も安い。だから、ここの常勤医は誰もオペしたがらないだろう。

「大して手を使うわけじゃないですので」

もちろん家族もそこは理解しているが、それなりに若い年齢の患者の指が曲がったままにしておくのは忍びないとのこと。近くの病院で手の外科の専門医に話を聞いてみたいと・・・

一番近いのは、大学病院の形成外科だ。かつて僕が所属していた医局だ。うーん、僕がそこに紹介状を書いたら、あのバカ者がどのツラ下げて患者なんか紹介してくんだとか言われるんだろうな。まぁその辺は仕方ない。


たかが20数人の患者を診て、13時過ぎまでかかる。昼飯はこんなものだ。



午後はなにもオペがないそうで、もちろん早退しても問題ないのだが、4時間ダラダラして午後分の給料をもらうか、それを放棄して家でゆっくりするか。どうせ家に帰っても雑用の仕事はしなきゃならないので、ウトウトしながらゆっくり明日の書類仕事をやる。


家に帰ってからは、カープが負けるとなんにもやる気にならない。いつも思うのだが、そんなことならナンにも好きにならなければいいのに。






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