今日は新年初めて、東北の僻地病院に来た。
2週間ぶりだが久しぶりな気がする。
連日のように東北は大雪だとのニュースが流れていたので、飛行機が飛ぶか否かは却って気にしなかった。
羽田に着いてみると当然のように「条件付き運行」
着陸できないときは羽田に戻ってくるという条件だ。
年末に雪が降ったとき、上空で1時間も旋回して待機したのち、羽田に帰らされたドクターがいた。あまり珍しいことではないらしい。
しかし、今日は久しぶりに60番台のゲートだったので、ゲートまでのバス移動がなくてよかった。
バス移動は好きじゃない。ラッキーだった。
離陸すると、少しもやがかかっているものの羽田上空はいい天気だった。
離陸してすぐディズニーランドが見える。電車で羽田からディズニーランドはけっこうあると思うが、飛行機なら数十秒だ。
人間がちっぽけなのがよく分かる。
もうちょっとすると、今度はかなたに富士山が見えた。
下降を始めるまではほとんど揺れなかった。
しかし、山並がはっきりしてくるとあっという間に下界は雲に覆われた。雪雲だから揺れもかなり激しくなる。着陸態勢に入るとアナウンスがあった直後、
「上空待機の指令が出ました」と機長。雲で視界が悪いとのこと。
おいおい。自分が乗っている飛行機では初めてだ。しかし、10分ほど旋回したのち、着陸許可が出たとのことで無事に下降を始めた。ソートー激しく揺れて、着陸の瞬間も機体は斜めになっていたが、問題なく着いた。
空港からの道のりも雪だらけだったが特に問題なし。30分ほど到着が遅れたものの予定通り外来診察へ入れた。
午前中は、天気が悪いこともあって外来はぼちぼちといった感じ。ゆっくり昼ごはんが食べられた。
16時から夕方の診療なのだが、15時ごろに時間外で発熱の高齢者が来るとのこと。来たらインフルエンザの検査を先にやっておいてくれと外来に頼んだが、その直後
「SpO2が70%台です」とのこと。インフルエンザの検査どころではない。
とりあえず酸素マスクをすると、少し呼吸状態が良くなった。レントゲンを撮ると右肺に中等度の胸水。しかし、SpO2がそんなに悪くなるような胸水ではない。呼吸が安定してきたのでCTを撮ると、胸水の周りは思い切り炎症像があった。重症肺炎で即入院。
そんなことをやっているうちに、あっというまに外来がたまってしまった。インフルエンザの予防注射から、健康診断の結果説明も含めカルテが溜まっている。18時に受け付け終了なので何とかそれまでに終わらせようと頑張った。
ようやく終わりそうになった頃、転んで足が痛い高齢者が直来で、脳梗塞疑いの中年が救急車で来るとの連絡。
・・・・・足が痛い高齢者のレントゲンを撮っている間に、とつぜん救急車が来た。何時になるか連絡してくれと言っておいたのに。
ドクターは一人しかいないうえ、この辺の救急車は担当地域がきわめて広いために受け入れ要請があってからものすごく時間がかかる。そのため、何分後に来るかは必ず教えてほしいのだが。
足のレントゲンを見る間もなく、救急車の対応へ。
脳梗塞の既往、意識はなくレベル300。来院時にすでに呼吸が危ない。腱反射の亢進が両側。脳梗塞か脳出血かわからないが、脳幹がヤバそうなのは明らか。
うちの病院で治療をしてもよいが、脳梗塞で町の病院かかりつけであるうえに、年齢も若い。町の病院に受け入れてもらった方がよさそうだった。
しかし、この呼吸状態では町に着くまでに呼吸が止まってしまうかもしれない。素早く検査を済ませ、呼吸が安定してきたのを見計らってCTへ。
脳幹出血。意識が戻るどころか、命が助かる可能性も低い。
治療の術はありません、という状態だが、家族の希望もあり町の病院へ転送することになった。
ここの病院は、当直医は一人しかいないので転送の時もドクターが付き添わないことも多い。しかし、今回はいつ呼吸が止まるかわからないので、救急隊に丸投げする訳にいかない。
仕方なく、院長に留守番を頼み救急車に同乗した。
いつもなら30分で着く道のりが、雪のためノロノロだ。道中、何度も呼吸があやしくなった。やはり、同乗してよかった。町の病院に着いたときは、何とか自発呼吸がある状態で引き継げた。
正直なところ、町の病院に行っても治療するレベルではない。しかし、最善のことができただろう。
久しぶりに救急医らしい動きをしたと自己満していたが、帰りの救急車の中では疲労困憊であった。
病院に戻ってくると、足のレントゲンが僕の机の上に置いてあった。よく見ると踵骨骨折。院長がしっかり処置してくれていた。
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