たまには時事問題に言いたいことを言わせてもらおう.
加計学園だか何だか知らないが、端から見ているとおよそ下らないことが論点になってしまっている都議選.都民じゃないから選挙の動向について意見するつもりはない.僕が言いたいのは安倍首相が苦し紛れに言った
「獣医学部を2校でも3校でも作る」という発言に対する、獣医のお偉いさん達の反応だ.
まぁ、批判の内容としては、優秀な教官なんてごく限られているので獣医の定員を増員されたらとても教員を確保できない・・・というのが主張みたいだ.
恐らくその通りだと思う.優秀な教員なんて新設大学で確保するのは極めて難しいだろう.それは医学部の新設でもさんざん議論されたが、獣医の場合はとてもとても医者の比じゃなく教員を確保するのは困難だろう.
それはなぜ困難なのか.
もともと獣医学部に限らず、多くの学部では大学院を卒業しても優秀な人材を確保するポストがない.優秀だから残って欲しいと思っても、枠がないのだ.獣医だったらじゃぁそういう人材はどこに行ってしまうか.研究を続けるなら医学部やそれ系の研究所に行くだろうし、就職するなら製薬会社、食品会社、農水省とかの官僚だ.一般の人が想像するほど臨床の獣医になる人は多くない.民間のなんとか研究所とか、なんとか試験所というところは唖然とするほど給料が安いから人気はない.
臨床の獣医になろうとしたらどうするか.大学で臨床を勉強しようとしたら、いまだに無給助手どころか研究生といって学費を払って診療をさせてもらうというポストがある.民間の動物病院に就職したら、言い方は悪いが見習い美容師と同レベルの給料ばかりだ.
医学部と同じ6年間勉強しなきゃならないが、薬学部みたいに就職先は多くない.メーカーなんて給料が安いからといって文系就職するヤツも少なくない.
就職するのはみんな金が目的なのかと思うかも知れないが、同レベルの工学部や薬学部に比べて就職先はかなりしょぼい.
僕の経験だからもう20年も前になるが、東北や北海道の畜産業がおおい地域で臨床獣医師のクチがあるかどうか問い合わせたら、人手は足りないけど給料は一円も出せないと言われた.中央競馬会は2浪している僕は受かるわけがないから出願させないと.民間の動物病院だったら手取りの給料は300万にも満たない.
そして、大学に残るとしたら大学院生として博士号を取るか否かだ.就職を4年も先延ばしするだけで、院を卒業したってまず大学のポストは得られない.
僕から見ていて、どれだけの優秀な人たちが「え、なんでそんなとこ就職するの?」といいたくなるようなところで働いていて、流動研究員とかいって3年ごとに契約更新するので転々としていたか.
僕の仲良かった先輩は岩手で牧師になっている.
運良く大学のポストがあったヤツらもたかが知れている.友人の教授君は国立大学教授で年俸800万だ.准教授、助手はいないから自分の直下が大学院生.
こういうことを考えると、獣医学会のお偉いさんが言うとおり確かに獣医の定員を増やしてもまったく満足な教育はできないというのは正しいだろう.だが、それは主張するところが違うんじゃないか?
今回の安倍首相の主張として獣医学部増設が必要というのは、いったい何をもって増員する必要があるか真意は知らない.動物病院が今以上に必要だとは思えない.しかし、食品関係、畜産関係などは必ず獣医の知識が必要な業界だ.要は医療に準ずる分野で獣医が必要だ.
おおまかに言って全国の医学部の定員は10000人.獣医の定員は1000人.10倍違う.医学部の場合は9割以上ちゃんと医療に携わる.獣医は僕も含め、半分以上が業界から離れる.その大きな理由は働き口がないからだ.
優秀な人材がいないと主張する以前に、そういう人材を確保できるような政策を要求するのが学会だの大学だののお偉いさんがやることじゃないか.これだけ獣医が注目されることなんて滅多にない.
獣医学部を増やそうと言っている首相を真っ向から非難してなにか生まれるのだろうか.これを機に、一気に獣医学部に追い風が吹くような政策を提案できないのだろうか.
大学に入る時に就職してからの給料を予測して学部を決めるヤツはそんなに多くないだろう.獣医の響きに惹かれて、動物の診療とかにあこがれて獣医学部に入っても、就職する時期になると唖然とする.なぜこれだけ勉強してきて研究もやってきて、ろくな就職先がないのか.
まぁこういうことに関しては、2年ほど前に教授君から
講演依頼されて獣医の学生の前でずいぶん喋った.そもそもその集まりは、こういった獣医の恵まれなさに危機感を感じた人たちの集まりだ.
獣医のお偉いさん達は、清貧でいろというのをいまだに主張するのだろうか.ポストのないところに人材は集まらないし、予算のないところにポストはできない.
応援よろしくお願いします→
>医学 ブログランキングへ[20回]