今月は形成外科の研修だ。
形成外科というと、いまいちピンとこない方が多いかも知れないが、からだの表面を外科手術で治す、言わば「外見」を治すところだ。
扱う範囲は極めて広いが、例えば、裂傷・火傷・口蓋裂・皮膚の腫瘍などが一般的だ。そして、美容外科も形成外科の範疇に入る。
皮膚科と違うところははっきりした線引きはないが、形成外科では外科手術でとれる腫瘍は扱うが、皮膚病や皮膚癌などは扱わない。
命に関わる病気の人が来るところではないので、診療中も時間の流れが緩やかだ。転んで顔を怪我したといって、前夜に自分が救急部で縫合した患者さんが来たりする。
そして、予約外来の半数が美容外科だ。黒子やシミを取るのが多いが、皮膚の皺にコラーゲン注入などというのもある。
50歳ぐらいのきれいなおばさんが、額の皺にコラーゲンを注入する為に月に一度ぐらいやってくる。見た目、どこに皺があるのか?と思ってしまったが、それを形成外科の部長先生に言うと「それをいったら仕事が成り立たない」との事だった。僕から見れば、額の皺をとる前にもっと脂肪を落とせばいいのにと思ってしまったが。
美容外科などは当然、保険が効かない。自費診療でもなく「自由診療」だ。自費診療とは、「保険点数の全額を払う」と言う意味で、保険証を失効した人などがこれだ。「自由診療」とは、完全に病院側が勝手に料金を決めていい診療のこと。
「自由診療」に関してちょっと興味深かった例を二つ。
お尻に大きな「母斑」があるということで来た生後6ヶ月の赤ちゃん。確かに蒙古斑よりも色の濃いくっきりした母斑だ。これはレーザー治療できれいになるのだが、部長先生はきっぱり
「子供病院に行ってください」
というのも、手間と診療費の兼ね合いだった。レーザー治療は自由診療の場合、「一発1000円」・・・500円玉1枚の面積で20000円ぐらいかかる。しかし、母斑の場合は保険診療になり、どれだけ大きくても28000円と保険点数が決まっている。この赤ちゃんの母斑は普通の人のおでこぐらいの大きさがあり、28000円でやるには大きすぎる。というわけで、これをレーザー治療すると普通の病院では大赤字だ。
もうひとつ、黒子をとりに来たおばさん。3つの黒子をとってくれということだったが、部長先生いわく
「いっぺんに3つともとると保険が効かなくなる。3回に分けてやれば20000円×3回の3割負担。いっぺんにやるなら自由診療で10万円。」
これはどういうことかというと、黒子除去は保険点数で決まっているが、一度に何個とっても保険点数は同じ。そのため、一回に一個ずつでないと取った分だけ病院側が損をすることになる。これは、歯医者に行って毎回一本ずつしか治療してくれないのと同じことだ。
僕は保険点数などほとんどわからないが、開業したら毎日保険点数との戦いになるのだろう.
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